美術館に足を運ぶのは特別なことになりがちです。もっと気軽にネットの上で美術鑑賞を楽しんでみませんか。また。このサイトではルーブル美術館でも販売されている複製画「ヘリオトワル」を購入することが出来ます。

絵画よもやま話

第35回「青の巨匠 東山魁夷」

2008年10月06日

青という色は「赤・青・黄色」の色の三原色の一つでもあり、「赤・緑・青」の光の三原色の一つでもあります。歴史の中で人類が一番最初に意識した有彩色は血の色でもある「赤」ではないかといわれておりますが、青空や海の色でもある「青」もおそらくは意識されていたのではないでしょうか。

インディゴやそれに類する植物から採られた「青」の染料はメソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマなどの紀元前の古代文明から使われておりました。そしてステンドガラスの技術向上により美しい青が出せるようになったことや、フランス王家が好んだことから、11世紀頃のヨーロッパでは、聖母マリアの衣の色としても描かれるようになり、「ロイヤルブルー」の名称の通り、高貴な色をしても捉えられてきました。

そんな古い歴史のある「青」の色。

青は様々な作家にインスピレーションを与えてきました。パブロ・ピカソにも親友の自殺にショックを受け、プロシア青をベースとする暗青色を基調として様々な作品を描いた「青の時代」(1901-1904)と呼ばれる時期があります。また、ラピスを砕いて作った、金と同じ価値のある青の染料を使って描き、「フェルメールブルー」とも呼ばれる美しい青を残したフェルメールも「青」に魅せられた画家の一人とも言えるでしょう。

そんな青を愛したわが国の巨匠が、東山魁夷です。東山魁夷が生涯に描いた作品、1260点。そのうち青を基調にした作品が470点にのぼります。東山魁夷の描いた大作、唐招提寺壁画の「山雲」「濤声(とうせい)」は、霧煙る山の湿気を感じさせるような「青」と、躍動感のある波の動きが感じられる美しさと深さのある青が感じられます。

日本を含む漢字文化圏(古代中国、朝鮮半島、日本、ヴェトナム)では緑までも、青として表現されていることがあり、青は多岐に渡る色を含んでいるともいえます。そんな様々な青を使って、東山魁夷は日本の風景を情緒的に描き出しました。

霞の青、暗さの青、森の青緑、薄明かりの青、寂寥とした青。暖かい青。

何か懐かしく、暖かく、そして少し寂しくなるような、日本の風景。

青の巨匠、東山魁夷が残した絵は失われつつある日本の風景と情感を、絵画という瞬間に留めているともいえるでしょう。

東山魁夷が託した、忘れてはいけない日本の風景を、是非お手元に置かれてみては如何でしょう。

written by 名画.net


©2006 meiga.net All Rights Reserved.